固定種野菜を育ててみよう

野菜には「固定種」と「F1種」という、異なった品種があることを知っていますか?

「固定種」とは、昔からその土地に根づき、長きに渡り作られ続けてきた野菜。

いっぽう、企業が開発した新品種。異なる品種を親として交配させ、双方の良い特徴を併せ持つ一代目の子孫を商品化しました。

現在、お店で売られている苗や種のほとんどはF1種。

固定種は、種を買って育てるのが一般的だと思います。

固定種の種は、地域の苗屋さんや種屋さんに少し売っているかもしれません。今は、固定種の種を扱う種屋のオンラインショップが複数あるので、そこで購入すると良いでしょう。

この記事では、「自分で野菜の種採りをしてみよう」と考えている人に向けて、固定種野菜の魅力をご紹介します。

また、F1種子に頼り切ると、「日本の食料自給率の未来はどうなるのか」についても言及します。

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自家採種をするなら固定種を選ぶ理由

自分で作った野菜から種を採り、種から野菜を育ててみたい、と思ったとき。

まずは野菜の品種選びからスタートです。

自家採取をするなら、固定種野菜を選ぶと良いでしょう。

自家採種のやり方が載っている書籍

私が購入した本をご紹介。

ひとつ目は、『固定種野菜の種と育て方』(野口勲 関野幸生 著)。

各野菜ごとに「素顔と栽培特性」「育て方のポイント」「種採りのポイント」が載っています。

固定種野菜の種屋「野口のタネ」の代表、野口勲さんが、F1種と固定種について解説しています。

関野幸生さんは、埼玉県で無肥料自然栽培をされている農家さん。

肥料を入れずに固定種の野菜を作っている関野さんは、肥料と農薬を使った農法の難しさに直面。その後、無肥料無農薬の自然栽培に辿り着きました。

関野さんは、土壌の生態系を取り戻すには、「種採り」と「連作」がポイントだと気づき、固定種野菜を作り始めました。その結果、良い成果が得られているといいます。


もう一つのおすすめ本は、『とっておきの野菜づくり』(関野幸生 渋谷正和 著)ですが、この本は現在は絶版になっているみたいです。

野菜の育て方、種の採り方を、1年経つとすっかり忘れる私にとって、なくてはならない本です。

種の蒔き方、育て方、種採りの方法までが、カラー写真で丁寧に紹介されています。

大変わかりやすいので、野菜の種まき時期や種取り時期になると、必ず開く本です。

種採りには固定種が最適

『固定種野菜の種と育て方』の中で、関野さんは、「よしま農園のホームページ」で知ったことを紹介しています。

「種採りをするには、F1種では採った種の性質がバラバラになってしまうので、固定種とか伝統野菜を使った方が良い」

『固定種野菜の種と育て方』26ページから一部抜粋

無肥料自然栽培で作物を栽培している、よしま農園のホームページ↓

そもそもF1種と固定種は、それぞれ、どんな違いがあるのでしょう?

固定種とは

固定種は別名「在来種」という名前で知られています。

英語では「Native species」。

固定種・在来種は、「その土地に根づき、長きに渡り生き続けてきた伝統的な野菜」です。

日本の伝統野菜を紹介しているサイト

日本には、どんな伝統野菜があるのか。

グーグルで検索してみたら、「日本伝統野菜推進協会」というサイトの、「伝統野菜都道府県別一覧」というページを見つけました。

伝統野菜だけでなく伝統果樹も。北海道から沖縄まで、様々な種類の固定種作物が紹介されています。

自分の住む地域では、どんな固定種野菜・果実が育てられているのか。調べてみてはいかがでしょう?

「日本伝統野菜推進協会」のサイト↓

古くから受け継がれてきた固定種作物ですが、種を繋がなければ消滅してしまいます。

日本伝統野菜推進協会のサイトに、伝統野菜の衰退を危惧する文章が掲載されています。

日本各地で昔から栽培されてきた伝統野菜の品種は、今、急速にその数を減らしています。

このままでは、地域の気候・風土に適応し、食文化を作ってきた在来種の野菜を食べることができなくなります。

日本伝統野菜推進協会のサイトから抜粋

地元産の作物を食べる

身体を養生する療法を実践してきた大森一慧さんも、地のものを食べることが、本来の食文化であると説いています。

昔は「三里四方の物を食べる」といって、徒歩で行ける範囲のものを食べていれば健康で暮らせる、という考え方がありました。

これは、身体と土は元をただせば同じもの、という「身土不二(しんどふじ)」の発想からきています。

人も作物も同じ土(環境)で育つわけですから、その土から健康に育った作物を食べることが、環境への適応能力をいちばん高めることになるわけです。

『からだの自然治癒力をひきだす食事と手当て』(大森一慧 著)第一章より一部抜粋

日本国内の食料自給率

高度経済成長期になると、市場取引の円滑化を図るため、農水省が「出荷規格」を設定。

野菜の色、形、大きさなどを統一し、それに外れたものは市場に出せなくなりました。

規格に沿った野菜を大量に生産するため、使用されるようになったのがF1種です。「発育が揃う」「色、形、大きさなどが等しい」などの特徴が、慣行栽培と合致しました。

一方で固定種野菜は、発育に統一性がなく、色や形、大きさも不揃い。その多くが「規格外」となるため、固定種野菜を作る農家は減ってゆきました。

農水省の「出荷規格」は2002年に廃止されましたが、今もなお、生産される野菜の多くがF1種。

生産方法のバランスが一方に偏ることで、国内自給率においての問題が指摘されています。

野菜の国内自給率は80%ほどと言われますが、タネそのものの国内自給率は在来種を中心とした8%ほどしかありません。
世界的な気候変動・災害・紛争など有事の際には、タネが入手できなくなる可能性があります。

ほとんどの野菜のタネは企業が開発したタネです。

種苗法では、育成者権を持つ企業や個人から許可を取らずに、登録品種のタネを採ったり、殖やしたりすることは育成者権の侵害に当たるため禁止されています。

しかし、昔からある在来種は、誰にも育成者権がないため、自由に自家採種ができ、殖やすことができます。

日本伝統野菜推進協会のサイトから抜粋

種苗法により規制された「自家採種・自家増殖」

現在、ホームセンターや苗屋で売られている野菜の種の多くは、企業が開発したF1種。

F1種は、農林水産省に「登録品種」の認定を受けた種で、知的財産権(育成者権)は、開発者(企業・育成者)にあります。

2020年12月に国会で成立した「育苗法の一部改正」により、登録品種を自家採種・自家増殖するには、育成者権者の許諾を得た場合に限り、認められることになりました。

つまり農家さんは、登録品種を自由に自家採種・自家増殖することができなくなりました。

(参考サイト「農業とITの未来メディア」)↓

種子の知的財産権・自家増殖について、各分野を専門とする弁護士の方々の解説が掲載されています。

F1種の90%は海外で生産されている

グローバル化が急激に進行する現在。種子法の廃止により、日本国内の米・麦・大豆が危機的状況に陥っていると、元農林水産大臣の山田正彦さんの講演の内容を、長周新聞が紹介しています。

トランプ関税(日本の自動車に25%の関税をかける)も関係する、国同士の、物の売り買いに関するやり取りについても書いてあります。

現在、世界の種子の生産の7割は、海外の大手企業3社が握っています。

この3社は「委託生産」「委託販売」を担い、そのすべてはF1種。

もし、固定種の種が途絶えてしまうと、上記の大手企業のような民間の種を使わざるを得なくなります。それはつまり、「食料自給ができない」「他に依存しないと食物が手に入らない」という状態です。

民間の種子に依存すると、作物の価格はさらに高くなる

2018年。日本の伝統的な在来種を国が管理するという「種子法」が廃止。

その理由は、「民間の優秀な種子の普及」でした。

民間企業がどんなに優秀な種子を開発しても、それを国内で普及させることが難しく、売り上げも伸びなかったので、政府は「種子法を廃止」しました。

下記にリンクしたサイト記事にあるように、戦後から続いた種子法は、わずか半年の議論で廃止されることになりました。

種子法が廃止されたことで、民間の種子が広く使われるようになりましたが、実際に使ってみると、予想外のトラブルが続出しているようです。

しかし、F1種に切り替えたことで、長年作ってきた在来種に戻ることは難しく、日本の米などの生産は、他に依存しないと作れない状況になりつつあります。

依存せざるを得ないということは、価格が高騰しても従わなければならず、種子の内容に異論があっても従わざるを得なくなります。たとえば遺伝子組み換え種子の問題なども含まれてきます。

「種子法廃止」を詳しく知ることができる、「農業とITの未来メディア」の記事↓

固定種野菜で自家採取することの意味

『固定種野菜の種と育て方』の中で、野口さんが固定種の魅力を語っています。

固定種野菜の良い点は、味や姿、形の魅力もありますが、なんといっても自家採取。

つまり自分で種採りができること。

固定種野菜から自家採取された種は以後、その土地の土壌条件や生産者の栽培方法にあわせて育ちます。

大昔から人類は、自家採取を繰り返すことで、その土地に合った作物を育ててきました。

『固定種野菜の種と育て方』2ページ 一部抜粋

今、固定種野菜の存在が、再び注目されるようになりました。

「自家採取できる」、「自然に順応している」という魅力が、大きなポイントだと思います。

まとめ

固定種について深掘りすればするほど、政治や経済に関わる問題にも触れることになると感じました。

「固定種・在来種・伝統作物」が、土地においても健康においても、私たちの基盤を作ってきたということがわかりました。

固定種の種子は、今も種売り場のコーナーのすみっこに、静かに存在しています。

また、固定種を扱っている種屋のオンラインショップもあります。

種採りをしている方から、種を譲っていただくのも、ひとつですね。

ぜひ、貴重になりつつある固定種の種を蒔き、種採りに挑戦してみませんか?

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