熊の生態が知りたくて、読んでみた本
北海道のヒグマに関する本を読みました。アイヌ民族最後のクマ撃ち猟師の、姉崎さんにインタビューするかたちの本です。
夏になると熊情報が気になります。山に行って、自然の中を一人で歩いてみたい願望がありますが、近年は熊の出没が頻繁にあり、こわくて気軽に歩けません。せめて熊の生態を知りたくて。実際に熊を相手にしてきたプロの猟師の話を知りたくなったのです。
私の住む本州に生息するツキノワグマと、北海道のヒグマは種類が違いますが。熊は熊。ヒグマの気持ちも知ることができる、興味深い内容でした。
アイヌ民族はヒグマを「キムンカムイ(山の神)」として敬ってきました。
アイヌでは、熊は獰猛な獣ではなく「山の神」でした。自然を崇拝する昔の人々の考え方、捉え方に、学ぶところがたくさんあります。
私が知っている、個人的な熊情報
千葉県に熊がいない理由
これは別のところで得た情報ですが。私の住む千葉県は、山脈のような、山から山に移動できる環境ではないので、熊がいないそうです。
つくばエクスプレスに乗って行ける筑波山にも、いないそうですが、ときどき、どこかの山から移動してきた熊の死骸が見つかるそうです(ネットで知った情報)。
四万温泉の熊情報
旅行で群馬の四万温泉を訪れたときに聞いた話では。日中に団子屋のおばあちゃんの目の前を、黒いものが走り去って行った。それが熊だったそうで。日中の商店街に出没するなんて、あまりにもおそろしく。人気がない木々の中でさえ、黒い塊が出てくるんじゃないかと、始終おびえたまま、温泉街や奥四万湖を歩きました。
そんな事実があるにもかかわらず。熊が人前に姿を現すことは、かなりレアなのだそうです。日本カモシカよりもレアなほど。
それでも、奥四万湖の公園の木々から獣臭が漂うと、熊がいるんじゃないかと、無駄に神経を尖らせていました。
松江では、熊よりイノシシ
松江の熊野大社に行ったときには、バスの運転手さんに「熊は出ないけど、イノシシはよく出る」と話していただきました。
イノシシは、田畑の作物を荒らすそうです。稲の収穫間近になって、イノシシが田んぼに侵入して、ぐちゃぐちゃに荒らされると、もう、やる気がなくなるそうです。
群馬辺りは、熊の行動範囲が民家のあるエリアにまで広がってきています。
いっぽう松江のように、熊が生活できる山や森が、まだ多くある地域では、熊も滅多に民家のあるエリアまで下りて来ないようです。
人間の住むエリアと、野生動物の住むエリアがしっかりと区分けされていれば、突発的な遭遇も防げるのかもしれません。
熊と人間の生活環境は似ている
もともと熊は、人間の住む里山の環境を好むのだそうです。
里山に生息する植物は多様性があり、熊の食料になる木の実や草の種類が豊富です。柿の木や桑の実など、おいしい食べ物があるのです。
奥四万湖の公園に出没した熊の親子も、食べごろのサクランボを目当てに来ていたそうです。雨が多い年は、森の中の木の実の生育が悪いので、食料を求めて里に下りて来るしかないのです。
怖がりで、毛の色も黒いから。イメージ的に、暗い場所を好むように思えますが。彼らが好むのは、光が当たっている明るい場所。そこには食べ物があり、光があり、沢がある。しかし人間が、住む範囲を広げたせいで、熊は人間の生活圏になった場所から立ち退き、山で生活するようになった。生活範囲を狭めたのです。
しかし現代ではアウトドアがブームになり。多くの人間が登山するため山に立ち入ります。熊や野生動物の生活圏に入って行きます。そのため、ますます、お互いの生活範囲の境界線が、あやふやになってしまいました。
悪いのは、山から出てくる野生動物ではない。約束を破った人間の方です。
この本を読んで知った、人間が壊す山の自然環境
たとえば、針葉樹の森は、人間が作ったものです。針葉樹の森には光が入りません。だから他の植物は成長しません。食物となる植物が育たなければ、熊も生息できません。
空から、虫を殺すための薬を散布された山には、虫がいません。虫を媒介として花粉を運んでもらう植物もいなくなります。熊も生息できません。
この世に、必要のないものなどない。自然が作り出したものが一つ消えれば、他のなにかが影響を受けます。「虫」という、人間にとっては小さな存在も。地球の自然の営み・循環に、なくてはならない存在。
自然から生まれたものは、みんな役割がある。いらないものは、ない。人間の都合で消してしまうと、生態系が崩れます。
山や森のような大きな自然も。畑や庭のような小さな自然も。そこに存在するものは、みんな役割があって存在しています。
おわりに
自然と共に生きたアイヌ民族の感性を学べる本。
「怖い」だけのイメージだった熊でしたが、熊の視点で見れば、また違って見えるようになりました。
外出の合間に、ちょこちょこ読んでいましたが。毎回ページを開くと、引き込まれる本でした。
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